集中治療医学

スタッフ

教授 Professor
升田好樹 Masuda Yoshiki, M.D., Ph.D.
所属:医学部医学科専門教育科目 集中治療医学
医学研究科地域医療人間総合医学人間総合医療学生体危機管理学
School of Medicine,(School of Medicine),Liberal Arts and Science  
研究テーマ:敗血症における血管内皮障害と臓器不全との関係
研究活動と展望:敗血症を含む,種々の生体侵襲時には凝固線溶系の活性化が生じる.特に血小板数は種々の病態において重症度評価あるいは予後予測の因子として用いられる.また凝固系の活性化とその抑制系である,線溶系の活性化とは相互に関連し病態の形成に重要な役割を担っている.血管内皮細胞は血液と接し,様々な刺激を受容し,生体内シグナルを伝達する機能を有し,その障害は凝固の亢進ならず炎症を惹起するなど血液凝固と炎症とは大きな関連を有している.この血管内皮上に発現する組織因子(Tissue Factor)や接着因子(selectin family)の発現が病態を形成するとともに,受け手である,血小板にも侵襲後の刺激が接着因子(P-selectin)を発現することが現在の検討で明らかとなりつつある.これらの血管内皮と凝固すなわち血栓形成の主体である血小板の接着因子発現により,血小板減少の機序が明らかとなり,治療法として血管内皮への接着の抑制あるいは,凝集抑制,肺血管床への集積抑制などにて敗血症の病態を改善する可能性が考えられる.


准教授 Associate Professor
巽博臣 Tatsumi Hiroomi, M.D.,Ph.D.
所属:医学部医学科専門教育科目 集中治療医学
School of Medicine,(School of Medicine),Liberal Arts and Science  
研究テーマ:重症患者からみたpre-nutrition
研究活動と展望:重症患者における栄養療法はガイドラインなどにより急速に普及し、栄養療法は他の治療法と並ぶ重要なものと位置づけられるようになった。特に、早期経腸栄養による感染症をはじめとする合併症発生率の低下、ICU在室日数の短縮などの効果が報告されている。一方で、ICUの緊急入室患者の中には、それ以前に適切な栄養療法がなされておらず、栄養状態の悪化が病態の変化に関与していると考えられる症例は少なくない。栄養療法、特に経腸栄養によって腸管粘膜構造や腸管免疫が維持され、bacterial translocationから敗血症?臓器不全の発症を防止することができる。手術や抗癌治療前からの積極的かつ適切な栄養療法“pre-nutrition”により合併症発生率が低下し、重症化が回避できる可能性がある。実際に、血液疾患の造血幹細胞移植前からの栄養療法により、移植後合併症によるICU入室患者は大きく減少している。各診療科?NST?ICUが共同し、pre-nutritionを推進することで、治療成績が向上し、患者QOLの改善につながることが期待される。


講師  Senior Lecturer
数馬聡 Kazuma Satoshi, M.D, Ph.D.
所属:医学部医学科専門教育科目 集中治療医学
School of Medicine,(School of Medicine),Liberal Arts and Science  
研究テーマ:酸化ストレス下における血管内皮グリコカリックスの障害とアルブミンによる保護効果
研究活動と展望:血管内皮細胞の内膜面には内皮グリコカリックスとよばれる糖鎖の層が存在する.内皮グリコカリックスはおよそ0.5から3 μmの厚さがあり,糖タンパク質,プロテオグリカン,およびグリコサミノグリカンにより構成されている.内皮グリコカリックスの機能は,第1に血管透過選択性のある防護壁として,第2に酵素や液性伝達物質の局所濃度調節域として,第3に血流などのシェアストレスといった物理的刺激の伝達経路の一部としてはたらいている.虚血再灌流障害,動脈硬化,過剰輸液,敗血症などでは,血管内皮障害とともに内皮グリコカリックスが障害されていることが示されており,血管透過性の亢進による循環動態の破綻や凝固異常を招く.これらの内皮グリコカリックスの障害には活性酸素種が関与していることが示されている.内皮グリコカリックスに対する知見の増加に伴い,血管内皮の機能を維持する上で内皮グリコカリックスそのものを治療の対象とする見方が生じている.しかしながら,内皮グリコカリックスの合成を促す薬剤は現時点で存在しないため,現在内皮グリコカリックスをいかにして保護し,修復させるかが論点となっている.内皮グリコカリックスの保護に関して,ステロイドの投与,吸入麻酔薬の投与,活性酸素種消去剤の投与といった方法が試みられているが,一般化された方法はない.一方,アルブミンの内皮グリコカリックスに対する効果として,虚血による内皮グリコカリックスの障害をアルブミンが保護することを,単離したモルモット心臓を用いて検討した報告がある.しかし,グリコカリックスに対する虚血再灌流障害に関して,in vivoでのアルブミンの保護もしくは回復効果を明らかにした報告はない.したがって,虚血再灌流障害モデルの動物を使用した,内皮グリコカリックスに対するアルブミンの保護および回復効果を検討することは,酸化ストレスを主体とする病態に関する基礎研究,その応用としての治療にとって重要であると考えられる.


助教 Assistant Professor
黒田浩光 Kuroda Hiromitsu, M.D.
所属:医学部医学科専門教育科目 集中治療医学
School of Medicine,(School of Medicine),Liberal Arts and Science  
研究テーマ:臓器不全とPhenotype,臓器連関
研究活動と展望:敗血症を初めとする重症病態において,さまざまな臓器障害,臓器不全がみられるが,それぞれの患者により不全臓器は異なる。また,一言で臓器不全と入っても,それぞれの臓器で障害の出方に違いがみられる。たとえば,急性腎障害といっても,乏尿から始まるものもあれば,非乏尿性のものもある。播種性血管内凝固でも,血小板が先に急激に低下するものもあれば,FDPやATIIIだけが低下するものもある。このように臓器の種類だけでなく,臓器それぞれの症状もさまざまなPhenotype(表現型)が見られる。このPhenotypeは臓器連関についても同様に見られる。このようにPhenotypeとさまざまな患者背景や血液データや,血液中の分子マーカーなどとの関係性を見つけることにより,病態の精緻な理解が可能となり,将来的に重症病態におけるPrecision medicineにつなげることが可能になると考えられる。


助教 Assistant Professor
相坂和貴子 Aisaka Wakiko, M.D. 
所属:医学部医学科専門教育科目 集中治療医学
School of Medicine,(School of Medicine),Liberal Arts and Science  
研究テーマ:
研究活動と展望: