衛生学講座

現在、我々の研究活動は次の4点に重点を置いている。1)ロタウイルス感染症の分子疫学、2)薬剤耐性菌の分子疫学的研究、3)細菌の薬剤耐性遺伝子に関する分子遺伝学的研究、4)感染症の時系列解析

Dept.of Hygiene

Our research activity in recent years is focused on the following four subjects: 1)epidemiology of rotavirus and poliovirus infections, 2) mutation and evolution of rotavirus genome,3)molecular epidemiology of nosocomial bacterial infections and study of drug-resistance genes, and 4) study of the effect of chemicals on early mouse embryos in vivo and in vitro.

スタッフ

教授
小林宣道 Nobumichi Kobayashi, M.D., Ph.D.
医学研究科 地域医療人間総合医学専攻 地域医療総合医学領域 環境保健予防医学
研究テーマ:胃腸炎ウイルス、薬剤耐性菌、新興病原微生物の分子疫学
研究活動と展望:感染症対策に資する基礎的情報を得ることを目標に、感染性微生物の分子疫学的研究を行っている。研究対象は、小児下痢症の原因として最も重要なロタウイルス、薬剤耐性菌として古くから知られるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が主であるが、腸球菌、肺炎球菌、グラム陰性桿菌(大腸菌、クレブシエラ、アシネトバクター等)、リケッチア等、様々な病原微生物についても解析を進めている。これらの病原微生物の遺伝学的系統を調べることにより、伝播や変異の実態が明らかとなる。病原因子や薬剤耐性関連遺伝子の分子遺伝学的解析から、病原性?薬剤耐性の機序を推測される。それら病原微生物に関する解析データを統合し、包括的な理解につなげることで、感染症対策に寄与することを目指している。開発途上国における最大の健康問題は感染症であり、全死亡数の四分の一を占める。我々は開発途上国における感染症の研究?支援を長期にわたり継続しており、胃腸炎ウイルス、薬剤耐性菌、新興感染症原因微生物などの共同研究を進めている。それと同時に各国の研究者の育成にも力を入れ、各国での研究指導、日本(必威体育_必威体育app-平台*官网)での共同研究、学位取得のための支援なども行っている。現在、中国、バングラデシュ、ミャンマー、キューバとの共同研究が進行中であり、人材交流をさらに発展させつつ、有用で質の高い研究成果を公表してゆきたいと考えている。



准教授 Associate Professor
鷲見紋子 Ayako Sumi, Ph.D.
研究テーマ:感染症およびその病原体の発生変動の時間的変動構造に関する研究、生体データ(特に心拍数)に関する研究
研究活動と展望:非線形?非定常時系列データから有意な情報を引き出すことを目的として、これまで、社会的に緊急性の高い対象の時系列データ(地震波、感染症発生数データ、生体データ)の解析、およびその結果を説明する数理モデルから生成される時系列データの解析を行ってきた。主な成果として、数理モデルによって生成されたカオス時系列の解析結果から、短い時系列からもそのカオス特性を明らかにし、予測値を定量的に示すことに成功した。また、日本の感染症サーベイランスデータの解析結果から、27の感染症データの時間的変動構造が3つのパターンに分類されることを明らかにし、病原体?疫学的特性が異なる感染症の発生メカニズムの分類が可能であることを示唆した。今後は、感染症の発生変動に、気象の変化やウイルスの変異などが与える影響を定量的に測ることを課題として、気象データや病原体検出数データなど、感染症の発生変動に影響を及ぼす要因の時系列データの時間的変動構造を調べ、これらの結果と感染症発生数時系列データの解析結果との相互相関を測る。このように、現在蓄積されている時系列データから有意な情報を引き出し、時々刻々と変化している感染症発生変動の時間的変動構造の要因を特定することは、現在懸念されている地球温暖化現象やウイルスの変異などによる新興?再興感染症の予防に資すると考えるものである。



講師 Assistant Professor
漆原範子 Noriko Urushibara,
研究テーマ:感染症起因菌の分子疫学的解析,病原性?耐性に係る遺伝子の分子遺伝学的解析
研究活動と展望:細菌が「医療施設や環境内で生き延びるのに必要な耐性を獲得する」,「病原性を持つ」といった形質の変化に関与するゲノム事象を中心に研究を行っている。標的は,例として薬剤耐性遺伝子,付着因子?侵襲因子?菌体内外の毒素をコードする遺伝子,更にこれらの遺伝子が水平伝播(世代交代を経ない,細胞間での遺伝子の受授)する際に必要な「運び屋」,すなわちプラスミドやトランスポゾンである。塩基配列の類似性から系統関係を推定し,感染経路や遺伝子進化の道すじを明らかにし,細菌学的特徴や疫学データとの関連を見出す。対象の菌種は,わが国でも起因菌として分離される頻度が高い黄色ブドウ球菌を含むブドウ球菌属,腸球菌,大腸菌で,主として医療機関にて収集された臨床株を用い,感染症起因菌の分布とゲノム変化の実態調査に重点を置いている。
これらの研究成果を元に,感染症起因菌の「来し方」を探り,「行く末(感染の拡大?耐性菌の蔓延?症状の重篤度など)」を測るに足るデータの蓄積を目標としている。



助教
川口谷充代 Mitsuyo Kawaguchiya 
研究テーマ:肺炎球菌の薬剤耐性と分子疫学的解析
研究活動と展望:肺炎球菌蛋白結合型ワクチン導入による肺炎球菌の血清型および薬剤耐性の変化の状況や流行菌株の特徴を分子疫学的解析法で調査し、加えて次世代肺炎球菌ワクチンのための表層抗原の分子疫学的研究を行っている。国内外の肺炎球菌感染症の発生動向および流行状況を把握し、増加しつつある菌株の遺伝学的系統を明らかにすることで、感染症予防対策に寄与する知見を得ることを目指している。


助手 instructor
アウン メイジソウ Meiji Soe Aung, M.D.
所属:医学部医学科基礎医学部門講座 衛生学講座
Department of Basic Medical Science Dept. of Hygiene
研究テーマ:薬剤耐性菌の分子疫学
研究活動と展望:感染性微生物の薬剤耐性は世界的に最も重要な公衆衛生上の課題のひとつである。現在、おもにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)を対象として、それらの保有する耐性遺伝子、病原因子、遺伝学的系統などを解析し、それら耐性菌の遺伝学的特徴と伝播の様態を研究している。今後日本(北海道)のほか、バングラデシュ、ミャンマー、キューバなど開発途上国における薬剤耐性菌についても調査を進める予定である。